シベリア欧州向けの鉄道1編成借上パイロット輸送結果
国土交通省は、2020年11月5日(水)から12月上旬にかけて実施したシベリア鉄道による日欧間貨物輸送パイロット事業の結果について公表した。
実験結果については、従前に行ったモスクワ向けの実験であがった問題と同じ問題が繰り返し指摘されており(下記詳細の項参照)、その問題については解決ができていないことが分かる。
この事業は、シベリア鉄道1編成を国土交通省が借上げ、海上・航空輸送に続く第3の輸送手段としての活用を検討する目的で実施された。これまでも、ロシア鉄道と協力し、2018年度には日本〜モスクワ間、2019年度には日本〜欧州間でシベリア鉄道による貨物輸送を実施。このパイロット事業は、主にコンテナ1本での貨物輸送だった。今回、さらに踏み込んだ形で利用促進に向けた課題を検証するため、1編成借を上げる「ブロックトレイン」で実施され、このほど、検証結果がまとまった。
コストについては、ブロックトレインによる鉄道料金の低減効果はあったものの、通常の海上輸送比で平均約2.3倍程度と、やや割高となった。一方、概ね海上輸送比で約半分のリードタイムを実現、15案件中6案件では、海上輸送比で半分以下のリードタイムとなった。手続きについては、通常よりも早期に貨物情報の提示を求められる等の課題があった。輸送品質については、概ね良好な結果となった。以上の結果を踏まえ、パイロット事業参加社からは、コロナ禍により日欧間物流が不安定化している中で、第3の選択肢としてシベリア鉄道の利用検討の余地があるとの意見があった。
以下詳細
1.輸送コスト
- ブロックトレインによる鉄道料金の低減効果はあったものの、総輸送費用(シア政府による補助金約500~1,000USDを含む。)は通常の海上輸送比で約1.4~約3.4倍、平均で約2.3倍程度。(ただし、時期や貨種等により変動の可能性あり)
- コロナ禍により日欧間物流が不安定化している中で、海上輸送、航空輸送に続く第3の選択肢として利用検討の余地があるとの声がある
- 一方で、商用化に向けては総輸送費用の更なる低減が必要。
2.リードタイム
- 概ね海上輸送比で約半分のリードタイムを実現。(約0.3~約1.0倍、平均で約0.7倍程度)
- 15案件中6案件では、海上輸送比で半分以下のリードタイムを実現(ポーランド、オーストリア、ドイツ、ベルギー等)。
- ただし、鉄道が予定よりも4日早く着駅に到着したことにより、鉄道以降の輸送手配が間に合わないケースが発生したため、リードタイムの一定化が望まれている。
3.(税関、トランジットなどの)輸送に係る手続き関連
- ブロックトレインの出発1ヵ月程前に、搭載するすべての貨物情報の提示が求められたが、貨物明細は通常、出荷直前に確定するため、対応が困難であったとの指摘があった。貨物情報の提示期限については見直しが望まれている。
- 鉄道運送状がロシア語表記のみであるが確認が困難であるため、英語表記のみの書類によるトランジットおよび通関手続きが望まれている。
4.振動、温湿度などの輸送環境品質
- 貨物には外装・内装共に、ダメージは確認されなかった。(ただし、計測装置には鉄道輸送の時に発生している鉄道起因の細かな振動による擦れなどのダメージを確認。)
5.貨物の位置情報確認