Office Ton Pan Lar

Consideration of International Affairs by Office Ton Pan Lar

ロケット砲で80人以上が死亡 ミャンマー情勢内戦の危機迫る

4/11(日) 付けのニューズウィーク日本版から。

遠くないうちにミャンマーは内戦状態になり、国軍による大量虐殺が始まる可能性が高い。

 

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ミャンマー国軍はデモ参加者への弾圧を容赦なく続け、武装勢力も巻き込んだ内戦に発展する恐れも

2月1日のクーデターで政権を奪取した国軍が、抗議活動を続ける市民への実弾発砲などを続けるミャンマー。情勢は日に日に混迷の度が深まり、打開へ向けた一筋の燭光すらまったく見えない状況が続いている。

そんななか4月9日、中心都市ヤンゴンの北に位置する古都バゴー市で、デモに参加していた市民を国軍が包囲し、銃火器などを発砲。その結果これまでに少なくとも80人以上が死亡し、200人以上が行方不明となる惨事が起きた。

これは地元のメディア「イラワディ」や米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」、オンラインメディア「ミャンマー・ナウ」などが11日に伝えたもので、鎮圧では銃器以外に対戦車用のロケット砲や迫撃砲まで使用されたといわれ、もはや「デモ鎮圧というより国軍事的攻撃」による「市民の虐殺」との指摘が強まっている。

ミャンマーでは2月1日のクーデター以降、国軍の発砲などで犠牲となった市民はすでに600人以上といわれ、3月27日の国国軍記念日には1日で100人以上が殺害された。

ただしこの時の数字は1日のミャンマー全土での犠牲者数だったが、今回のバゴー市の場合は1日に1都市で発生した犠牲者数としてはこれまでで最悪となるとみられている。

 

<負傷者手当ても国軍が拒否>

これまでの各メディアの報道を総合すると4月8日から9日にかけてバゴー市内で反国軍デモに参加していた市民を国軍が包囲し、逃げ道を封じたうえで銃、ロケット砲、迫撃砲などで一斉に攻撃したという。ロケット砲は合計で7発使用されたとの未確認情報もある。

さらに国軍がバゴー市内で捕まえた男性市民を裸にしたうえロープで縛り、バイクで引きずり回すという残虐な行為も目撃され、この男性はその後死亡が確認されたという。

犠牲者や負傷者は市内の学校や仏教寺院に収容されたが、負傷者の手当てを僧侶が申し入れたが国軍はこれを拒否したため、治療もできなかったといわれている。

その後9日夜から10日朝にかけて国軍が犠牲者の遺体と負傷者を収容して運び出したものの、どこへ運ばれたのか、負傷者はどうなったのかについては情報がなく、行方不明者の大半はこの時の負傷者とされ、その安否が気遣われる状況となっているという。

バゴー市内の寺院などには10日以降も兵士らが陣取って市内の監視と警戒を継続しているため、一般市民は屋外にまったく出ることができない状況が続いている。また携帯電話も一時的に遮断されて現地の状況が不明の点も多いという。

バゴー市周辺では国軍の攻撃から逃れるため一時避難した市民も多く、自宅に戻れず孤立しているものの、国軍の監視が厳しく救済活動も難航している模様だ。

 

少数民族武装勢力と国軍の戦闘勃発>

また4月10日には北西部のインド国境に近いザカイン地方のタムで地元の武装勢力と国軍が衝突、銃撃戦となった。「イラワディ」の報道や地元の少数民族武装勢力「クキ民族組織(KNO)」や「クキ民族国軍(KNA)」などの情報によるとこの戦闘で兵士と警察官18人が死亡、市民1人も死亡したという。

これより前の4月6日には南東部モン州ドゥパラヤ地区で「カレン民族同盟(KNU)」と国軍との交戦が伝えられたほか、7日にはアイヤルワディ地方のカレイ市内で武装勢力と国軍が戦闘状態になり、国軍側はマシンガンを使用したといわれている。

このほかに東中部シャン州の「シャン州国軍(SSA)」や東部カレン(カイン)州のKNU、北部カチン州の「カチン独立国軍(KIA)」なども反軍政を掲げて抗議活動を続ける市民への連帯を表明して武装抵抗で連携する動きを強めており、今後ミャンマーでは国軍と少数民族武装組織による本格的な内戦に発展する懸念も高まっている。

 

<内戦と国軍による大虐殺の危機>

こうした状況の中、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相率いる民主政権がクーデター後に結成した「連邦議会代表委員会(CRPH)」によって国連大使に任命されたササ医師が9日、日本の外国特派員協会のオンライン会見に登場してミャンマーの厳しい現状を訴えて国際社会の協力と支援を強く求めた。

そしてササ医師は「遠くないうちにミャンマーは内戦状態になり、国軍による大量虐殺が始まる可能性が高い」と発言して、ミャンマー情勢の今後に関して悲観的な見方を示した。

強権的な姿勢で人権侵害、人命無視の弾圧を続けるミャンマー国軍に対して、非武装無抵抗の反軍政運動を続ける市民や学生の間からも「果たしてこのまま一方的に虐殺されるままでいいのか」という意見も生まれてきているという。

反軍政の活動は地方で国軍への攻勢を強めている少数民族武装勢力との共闘を含めて大きな転換点に差し掛かっているといえるだろう。