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Consideration of International Affairs by Office Ton Pan Lar

ミャンマー外資撤退 生活困窮を心から憂う

2021年4月20日日経新聞ミャンマー外資天然ガス採掘停止 ペトロナスや豪州系 国軍資金に圧力」を読み、

2021年4月20日外資ミャンマー撤退
⇒ 輸出低下
⇒ 外貨不足
⇒ インフレ
⇒ 生活困窮
外交・人権・政治よりも、ミャンマーに残してきた従業員の今後の生活を心から憂う。

 

 

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採掘停止の余波は国内の電力供給などにも広がる
ミャンマーの海底ガス田を巡り、外資企業が相次ぎ採掘の停止や開発計画の凍結を決めた。クーデターで実権を握った国軍の実質的な外貨収入源になりかねないためだ。国軍への圧力となる一方、この動きが広がれば、輸出先国へのガス供給や国内の電力需給に影響する可能性がある。

マレーシアの国営石油大手ペトロナスは4月に入り、ミャンマー南部沖のイェタグン天然ガス田について無期限で生産を停止したと発表した。同社は「産出量が1月から急減し、技術的な限界値を下回った」と、不可抗力により契約続行が不可能になったと説明した。


同ガス田の権益は事業主体のペトロナスが40.9%、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)が20.5%を保有。タイ政府系のPTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)と、日本政府・JX石油開発・三菱商事による共同出資会社も19.3%ずつの権益を持っている。

ミャンマー沖で新たな海底ガス田の開発を進めていたオーストラリアのウッドサイド・ペトロリアムは「平和的な抗議デモへの武力行使を深く憂慮している」と非難し、「(ガス田開発に必要な)試掘チームを解散させた」と公表した。同社広報によると、3月までに関連する人員や機材をミャンマー国外に出した。

同社は仏トタル地場企業と組んで海底鉱区の開発権を取得。ガス田を発見し、数千億円を投じて開発する計画だった。

天然ガスは2011年まで続いた軍事政権の外貨収入源となった経緯がある。アウン・サン・スー・チー氏を支持する議員らが組織した「連邦議会代表委員会」は3月中旬、「国軍が支配するミャンマー石油ガス公社への支払いを続ける企業を非難する」という声明を出した。


ミャンマー天然ガスの約8割をパイプラインを通じてタイや中国に輸出している。国連統計によると、ミャンマー天然ガス輸出額は20年に33億ドル(約3600億円)と輸出全体の20%を占めた。縫製業などの輸出拡大で輸出に占める割合は減ったものの、国家の外貨収入の柱であることに変わりない。

米国上院の公聴会では国連のアンドリュース特別報告者らが、天然ガスが「単独で最大の収入源になっている」と指摘。米国の主導で「(ミャンマー政府に支払う費用を第三者に預託するなどの方法で)ガス供給を継続しつつ、資金源になるのを防ぐべきだ」と述べた。

もっとも、ガス生産の停滞はミャンマー国民の生活を脅かす側面もある。天然ガスの約2割は国内向けで、主に発電に使われているためだ。政府によると19年度には同国の発電能力(約600万キロワット)の4割をガス火力発電が占める。

現在4カ所ある既存の海底ガス田は20年代前半に枯渇による減産が見込まれる。20年には液化天然ガスLNG)の輸入を始め、ミャンマー政府は新規ガス田の開発を推進している。地場企業には独力で海底ガス田を開発する力はなく、外資企業が撤退すればミャンマーはいずれ外貨不足と電力不足に直面する。

産出量で国内最大の海底ガス田を運営するトタルは、既存ガス田の生産を継続する考えだ。このガス田はミャンマー国内の発電用天然ガスの約5割をまかなう。

パトリック・プヤンヌ最高経営責任者(CEO)は仏紙への寄稿で、ガスの生産を止めれば「数百万人の人々が電力を失う」と指摘。「もし生産停止を決定すれば(従業員らが)強制労働させられる事態が十分考えられる」とも主張した。

国鉄鋼大手ポスコ傘下で商社機能を担うポスコインターナショナルは、ミャンマー西部ラカイン州沖で天然ガスを生産する。同社は日本経済新聞の取材に「問題なく生産を続けており、今後も通常稼働を続ける見通しだ」と回答した。グループのポスコ鋼板は鉄鋼事業での国軍系企業との合弁を解消すると発表したが、天然ガス事業は継続する構えだ。

複数のガス田に権益を持つタイのPTTEPもクーデター以降、沈黙を保っており、権益を放棄する可能性は低そうだ。タイは、輸入するガスの4割以上をミャンマー産が占める。

天然ガスに対する制裁は国軍の「居座り」を防ぐ切り札になるが、発動すれば一般市民や近隣国への影響も大きい。